2023年6月2日

労働安全衛生法

「他業種より厳しい」運送業での健康診断の再検査対応

まずは事業者(企業)が有する健康診断に関する法的な義務を整理しましょう。

 

年1回の定期健康診断の実施義務(対象者は常時使用する労働者(特定業務従事者を除く))があるのは勿論、

加えて企業では下記の対応が必要です。

・有所見者への事後措置(就業判定など)
・健康診断結果の5年間保存
・労働基準監督署への報告書の提出(従業員数50名以上の企業のみ)

※健康診断の実施については、定期健康診断のほか、雇い入れ時健診や特定業務従事者・海外勤務者の健康診断、特殊健診など企業での業務内容に応じた健診実施義務も定められています。

 

健康診断の再検査とは?

今回のタイトルに記載した「健康診断の再検査」とは、健康診断(一次検査)での「再検査が必要」という判定結果のことを指します。

健康診断の実施機関によって判定基準が異なるので、まずは検査結果をよく確認する必要があります。

再検査とは一次検査で確認した異常な数値が「一時的なものなのか、もしくは身体的な問題に起因するものなのか」を改めて調べることです。

精密検査と記載があった場合は、さらに詳細な検査で異常値の原因疾患を探り、治療の必要有無を確認する対応となります。

 

この再検査の実施については、上記の企業の義務とは異なり、

労働安全衛生法上は、あくまで企業には従業員に再検査を受けるよう受診勧奨する努力義務が設けられている状況です。

 

ただし、ここで注意したいのは大前提として企業は従業員に対して安全配慮義務を有しているという点です。

企業が「あくまで努力義務なので」と、従業員への再検査の受診勧奨を放置していた場合に、

結果として従業員が体調を崩してしまったケースが生じれば、企業の安全配慮義務責任を問われる可能性が生じます。

企業はしっかりと従業員に対して再検査の受診勧奨を行い、その対応の結果を記録として残していく対応が求められます。

何より、再検査を進めることで従業員が病気になることを早期に予防することが重要です。

 

運送業についてはさらなる対応が必要

「健康診断の再検査の結果については受診勧奨を実施し、対応の記録を残す。」

一般的な企業の対応としては、ここまで実施することが最低限必要な対応となりますが、

運送業の企業では、さらに踏み込んだ対応が必要となります。

 

というのも、2021年に貨物自動車運送事業法の法改正があり、下記の行政処分の追加がありました。

健康起因事故の発生時 当該ドライバーの状況について
・事故発生時から過去1年以内に法定の健康診断の未受診があった場合
・健康診断の再検査を受診させずに乗務させていた場合

【行政処分の内容】 初違反40日車、再違反80日車

参照 貨物自動車運送事業者に対し行政処分等を行うべき違反行為及び日車数等について 別表

健康起因事故とは、ドライバーが脳疾患、心臓疾患及び意識喪失を発症し、負傷者(当該ドライバーを除く)が生じた重大事故などのことを指します。

近年、この健康起因事故が増加しており、運送業の企業における従業員の健康管理が適切に遵守されていない事例が発生していることが問題視され、今回の法改正となりました。

他業種より厳しい運送業の検診再検査

運送業での、従業員の健康管理への取組方法

上記の通り、運送業の企業へは他業種よりも厳しいルールが適用されています。

その理由としては、健康起因事故発生時の被害範囲が大きくなる事例が発生していることと、

オフィスワークなどと異なり、企業が勤務中のドライバーの様子を確認することが難しい状況が影響していると考えられます。

基本的に運転中は一人職場となるドライバーが、突然体調不良を起こし事故を起こしてしまうことを防ぐには、

やはり日頃からの企業によるドライバーの健康管理への取組が重要です。

 

まずは法令遵守の対応として、上記にあげた健康診断の実施を再検査受診まで徹底して行うようにしましょう。

その際に、産業医などの健康管理の専門家を活用することが有効です。

健康診断再検査の受診勧奨について、企業の人事担当者が推進することが勿論重要ですが、担当者が従業員の説得に苦労するケースも少なくありません。

そういったケースで産業医面談を設定し、産業医から従業員に対して

「どうして再検査を受診する必要があるのか。このまま放置してしまうと自分に健康上どういったリスクが生じるのか」

といった説明を医学的な知見からアプローチすることで、再受診につなげることができた事例も少なくありません。

 

やはり従業員としても、働けなくなってしまう=収入がなくなってしまうことは避けたいものです。

健康診断の再検査を受けることは会社にとっても必要ですが、従業員本人にとってもメリットがあるのだということを理解してもらえるように案内してきましょう。

 

また、健康診断結果に関する対応は従業員数に関わらず対応が必要となります。

従業員数50名未満の小規模事業場では産業医不在の状況がほとんどです。

運送業においてはエリア毎の配送センターなどが、小規模複数箇所で運営されているケースも多い状況があります。

 

小規模事業場での健康診断結果への対応方法としては、地域の産業保健支援センターの無料サービスを利用することが可能です。

ただし、事業場が複数箇所、複数エリアにわたっているケースでは、エリア毎のセンターと個別で対応調整を行わなければならない為、企業の担当者の負担が高くなってしまいます。

また近年、予算や人員の関係で産業保健支援センターに対応を断られたというケースも少なくなく、当社サービスへの対応相談も増加しています。

 

上記のような状況を踏まえ、運送業の顧客においては、小規模事業場の従業員も対象に含めた、統括産業医を導入させていただくケースが増加しています。

運送業における統括産業医導入のメリット(小規模事業場を含めての対応)
・健康診断事後措置や長時間残業面談の対応について、統括産業医にまとめて依頼ができる。(人事担当者の負担軽減)
・再検査受診についての個別アプローチの取組が可能になる。
・自社の状況を把握したうえで、従業員の健康管理についてのアドバイスをくれる顧問を確保できる。

2024年問題への対策も求められる運送業界では、社内の負担を減らしながら必要な従業員の健康管理体制を再構築するご提案も多くなっています。

 

 

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